大人と子どもではこれだけ違う「ちゃんと読む・何度も読む」

まさおくんの体重は、サバンナ・シマウマと同じ288kg?

まさお君のお父さんの体重は72kgです。これは、まさお君の体重の4倍に当たります。まさお君の体重は何kgですか。

小学5年生にとって頭の痛い学習単元は「割合」

小学5年生の学習範囲ですが、お子様の多くが苦手とする範囲でもあり、親御様が「大人だから答すぐに分かりますけれど、これをどうやって子どもに伝えればよいのか分からない」とおっしゃる範囲でもあるのです。

◆ とらえ方のギャップに気づいて下さい

こういう問題にお子様が関わりはじめると「分からない」と連発するようになります。連発するお子様はまだ良い方で、言わないお子様も結構多いのです。ですから学期末の成績懇談や通信簿(通知簿)をご覧になってお子様の実態を知るというパターンも少なくありません。

 

国語の読解問題や算数の文章題が苦手なお子様を横にして、塾でのご相談時によくおっしゃる言葉が「問題をよく読んでないんです」「なんべんも読み直しなさいと言うんですが、何回言ってもしません」なのです。

 

〈例題1〉

さち子さんは定価1500円のTシャツを3割引で買いました。いくらで買いましたか。

では、検証していきますね。「定価1500円のTシャツを3割引で買いました」というところです。

 

① 塾長からお子様に尋ねます。 「3割は0.3である」ということは知っていますか?

 

② お返事が「はい」であれば、ひとつのハードルをクリアできました。もし「いいえ」ならば「ここから復習ですね」という塾長からの回答になります。

 

③ 問題のか所は「3割引で」というところです。大人であれば、「定価の7割で買った」んだなと言うのが分かります。理由はスーパーなどのチラシをご覧になるなど日々の生活の中で 経験なさっているからです。一方のお子様はというと、「3割引で買った」のと「3割で買った」のとの区別ができていません。そもそも「3割引」の意味が分からないし、問題文には書かれていない「7割で買った」という発想が出来ないのです。「割合」の学習内容に苦手意識のないお子さんは大人と同じ発想ができるのです。ですから、この発想ができないお子様に「もう1回読んでみて」「何度も読みなさい」「ちゃんと読みなさい」と言われても、ただ何度も何度も読んでいるだけなのです。

 

大人の「ちゃんと読む」「何度も読む」は「読み落としがないかを確かめながら慎重に読む」という暗黙の了解のもとに成り立っていますが、お子様の場合は「ちゃんと読む・何度も読む」は言葉そのままでしかありません。そこにお気づきですか

● 苦手なお子様には文章題の読み方をお話しする(教えるのではなく!)ところから始めましょう

「読み方を教える(お話をする)」という部分で親御様からよくいただく質問が、「細かく教え(話し)すぎると、答まで教えることになりませんか?」というものです。塾長である私からの回答は以下の通りです。

 

「これが答だとは教えないで、これが答だと気づかせることが大事です。あるいは、『3割引で買ったということは、何割で買ったの?』というところでお子様から『7割』という答が引き出せたら、『それってどうやって求めたの?』という問いかけをして、『定価を1と見なして0.3を引く』という概念へ導いていくのですけれど、この『定価を1と見なす』というのがとても難しいのですね。」

◆ どうして1500円が1になるの?

「割合」にせよ「百分率に」にせよ、もとになる数を「1」として考えるといういのが基本です。ところが、「1500円」がいきなり「1」になるなんて、お子様には信じられないことなのです。「だって、『1500円』はどこまでいっても『1500円』で、絶対に『1』になんてならないじゃん」というのがお子様の頭の中なのです(結構頑固ですよ。当時の私がそうだったから)。

◆ 1割は0.1で10分の1のことだから・・・

「1500円を10で割ると150円。この150円が1500円の10分の1で、これを1500円の1割と言うんだね。で、その150円の3個分が3割だから150×3で450円。3割引というのは、1500円から3割に当たる450円だけ安くしますということです。」

 

このようにして説明していくと、

「500÷10=150 → 150×3=450 → 1500-450=1050」

というのが、けっこう面倒なことが分かってきます。そこで次の段階に移ります。

次に1割は0.1だから、10割は0.1×10=1であることを教えます。定価は10割のことで、そこから3割引をするから、「10割-3割=7割」これは「1-0.3=0.7」と書き換えられから、「1500×(1ー0.3)=1500×0.7=1050」のほうがずっと便利だということを話します。

 

ここで大切なのは「教える」のではなくお話として伝えるようにすることです。なせなら、そのほうが断然柔らかな雰囲気になるので、お子様を安心させることができて、お子様に考

えるための気持ちの余裕を授けることができるからです。

文章題=バーチャル(仮想空間)

なぜこんなことが起きるのでしょうか。それは、算数(数学)の文章題は問題にすぎなくて、とにかくそれらしい答を出せれば良いという思考でいるからです。つまり、文章問題はバーチャル(仮想空間)で起きていることであって現実は現実、なので、解決もまた仮想空間で完結されればよし。これに近い感覚でいる子どもさんが少なくないように思います。

抽象思考だって、現実から離れたら成り立たない

例えば、中学校過程で学ぶ理科について、最初に学習するのは身近にある植物のことであったり、日頃見慣れているレンズについてであったりします。これは現実に即した学習(身近な内容)から抽象思考へと発展させる足がかりにしてゆくというプログラムが組まれているからです。

 

これに対して、地震のメカニズムとか化学反応にいたっては実際には見ることができませんが、連綿と積み上げられてきた論理があり、その論理に従って判断すれば、地震であればグラフ化され、化学であれば反応式として目に見える形で示すことができます。このように実際の目で確かめられないことでも論理的には確かめられる。これが抽象思考です。でも、現実から離れてしまっては成り立たないのです。

 

文章題も、実際にミカンやらリンゴやらケーキを目の前に出すわけにはいかないし、確率論にいたっても、サイコロを2つか3つくらいまでなら目の前に出せますけれど、それでも216通りの組合せを実物として見せるにはかなりな無理があります。

「あ、そうか」と「あっ、そうか!」の違い

文章題が苦手(キライ)なお子さんの大抵は、現実とのギャップがとんでもないことになっています。その結果として無意識の領域では  まるで「問題は問題。現実は現実。 これらをつなげるとは何事ぞ」なんてことになっているかも知れません。

 

対症療法としては、問題の読み方、つまり方法論とかスキルを指導すれば良いのですが、対症療法はどこまで行っても対症療法、いわゆる、付け焼き刃なので、「あ、そうか」の繰り返しになります。

 

「『あ、そうやった発言』や『あ、そうか発言』の多い子ほど、 お勉強ができない子。」というのは、私が生徒さんによく言うせりふのひとつです。それは、一生懸命考えた末の「あっ、そうかっ!」ではなくて、反射的に言っているだけだからです。「あ、そうか」と「あっ、そうか!」この差は大きいのです。

国語力はすべてに及ぶ「基礎エンジン」

国語力というのは、あまりにも漠然としています。前述のように問題と現実をつなげるようにするのが国語力であるなら、問題文に使われている言葉を理解し、何が書かれているのか、何を問われているのかを自力で理解するのも国語力です。

 

そこで具体的にするために、次の2つにしぼります。① 語彙数:知っている言葉の数。/② 語彙力:知っている言葉を使いこなせる力。

 

①の知っている言葉の数は、お店でいえば「在庫数」で、②の使いこなせる力は、いわゆる営業力です。在庫ばかりでは商売にならない。いくら優れた商品でも売らなきゃお話になりません。文章題の苦手、文章を読んでもよく理解できない、人の話を聞かない、人の話や書かれていることを身勝手に自分の都合のよいように解釈する(曲解する)。そういう人の多くは語彙数と語彙力が不足しているといえます。実際に、国語科の勉強を向き合ってしはじめれば、英語ができるようになっ

てくるし、算数も数学もできるようになってきます。

ただし、ある程度の時間がかかります。

語彙数・語彙力の発達はとても時間がかかります。それにもまして環境で大きく左右されます。極端な例ですが、攻撃的な言葉が飛び交う環境で育った人は、成長してゆく中で余程の気づきがない限りは、言葉や感情のコントロールがでずに短絡的かつ攻撃的で直線的な発言しかでない大人になるでしょう。拙著『塾ごっこ』には、発語と同時に3万冊の絵本や童話などのお話を読み聞かせになったお母様のお話を掲載しています。このお話を伺ったときは、ただただ驚かされ、感服させられました。このことから、ことばの成長は頭脳の成長と連動しているということが分かります。

さらに詳しく

大阪市塾代助成の加盟塾です。