関数が苦手というお子さんが少なくありません。中には「関数はもういいや」と、あきらめている子もいますけれど、そういう子たちに細かく尋ねていくと、あることが浮かび上がってきます。
中学2年生で1次関数を学びますね。数学が苦手という子は、この単元の最初の部分でつまずくことが少なくないのですが、それは次の所です。
①「傾き」「変化の割合」「比例定数」
②「y切片」「定数」「y軸との交点」/「x切片」「x軸との交点」
①について、名前こそ異なりますが、全部同じ意味合いなのです。
②については、「y切片」「定数」「y軸との交点」が同じ意味合いで、「x切片」「x軸との交点」が同じ意味合いなのです。
「分からない」を連発するお子さんのほとんどが、この言葉の意味合いが分からずに振りまわされています。さらに良くないことに、意味合いを理解せずに言葉だけを覚えようとしているから、余計に覚えられないということに気づいていません。
意味が分からないのだから、グラフや式のどの部分と結びついているかという繫がりは、もちろん理解できません。
文章問題でも図形の証明問題でも、「分からない」と言う子の共通点は、数学が分からないのではなくて、書かれている文の意味合いが捉えられないという点です。
これって、原因は数学ですか? 苦手な本当の理由は言葉の意味合いを理解できないから、解決の糸口を見つけられないことではありませんか?
逆に言えば、書かれている意味合いが分かれば図も式も書けるし、大抵の子であれば、式が分かれば計算は出来ますから、問題の正解にまでたどり着くことが出来ます。つまり、苦手な本当の理由は「ことばの理解度」にあるのです。
(1)は大抵の子どもさんは解くことが出来ます。ここまでは2次関数の基本中の基本動作で正解にたどり着けるからです。
問題なのは(2)の方です。ある生徒さんが「解答冊子の解説を見ても、ナンでこんな解き方をするのか分からない」と言って持ってきました。
「これ、一次関数の式だね」と言ったのですが、どうして2次関数の問題に1次関数の問題が出されているのか全く分からないようでした。
「問題をよく読んでごらん。直線になることが分かる所があるよ。」
(2)の問題で、「x≧40からは一定の速度で走る」というところです。
一見すると「0」から始まる曲線のグラフがそのまま連続するように思えますが、40秒後までの曲線のグラフと40秒後からの直線のグラフはベツモノなのです。点Bから点Aを通る直線をそのまま下に伸ばしてゆくと、点Aから下の部分は隠されていて、点Aから点Bを通って上に伸びる直線だけが現れていることがわかりますから、半直線ABは一次関数のグラフということになります。
この解説では、「分からない」子どもさんには難しすぎるので、理解するためのきっかけを次のように与えます。
「一定の速度で走る(動く)様子をグラフにしたら、どんなグラフになる?」とこちらが問いかけても、キョトンとしています。ということは、「一定の速度で走る(動く)=動きが一定=グラフは直線になる」という結びつきがないということになります。
ことば力が強くないということは、洞察力が強くないということなのです。この状態なので、証明問題を解くときに、自分が考えた道のりを文章化させることもなかなかできません。
数学は論理のかたまりです。論理とは、何かを説明するときに、筋道が順序よく立てられていて結論に至るまでの道のりの途中で決して飛ばないことをいいます。つまり、証拠を示しながら順序よく進めてきたのに、ある箇所だけ「証拠はないけれど、多分こうなる」では論理としては成り立ちません。この論理力こそが文章力につながり、その文章を構築する力が考える力になり、洞察力に繋がっていきます。ことば力とは、知っている語数(語彙数)だけでなく、その語彙をたくみに使える力(語彙力)のことです。ここを鍛えなければ、論理の集大成である数学が伸びるはずがないというのが平川塾のコンセプトです。