中学生・現代国語へのアプローチ

読解問題は理系?

◆ 国語の先生に尋ねたけれど・・・

親御様がまだ学生さんだった頃、国語の勉強の仕方に悩まれて、こんな質問を国語の先生になさったご記憶はありませんか?

「先生、読解問題(国語)の成績を上げるには、何を勉強したらよいですか?」

すると、答は、こんな感じ・・・

「たくさん本を読みなさい。」「読解問題をたくさん解きなさい。」

なるほど! と思ったあなた。さて、解決できましたか?

 

◆ 漠然としたままで指導されている?

あなたにお伺いします。

「学生さんだった頃、国語ってどんな勉強をなさったか、具体的に思い出すことはできますか? 例えば、数学だったら『ああ、そうそう。関数が苦手だった。あ、でも、〔こんな方法〕とか〔あんな方法〕を教えてもらったら、できるようになった記憶がありますね』というように、具体的に思い出すことができるのではありませんか? では、国語はどうですか?」

 

大抵の場合は、こんな感じではありませんか?

「漢字とか、ことわざとか、慣用句とか・・・。あとは、読解問題とか。ああ、そうそう。読解問題がねぇ・・・。苦手というのか、『ナンでこんなことしなきゃいけないの? 日本人なんだから、毎日、日本語を使ってるじゃん。』とか思ってましたね。」

 

中には、「勉強の内容よりも、先生の世間話がおもしろかった。」なんていうことも少なくありません。

 

ナンでこんな記憶しかなのか? それは、漠然と教えられていたからです。とはいうものの、国語を指導する先生でさえかつて漠然と教えられてきたからです。例えば、こんな感じですね。

 

「慣用句とかことわざは、どうやって覚えましたか?」

「大人になるにつれて、知らない間に覚えたような・・・。」「こんなん、大人になったら生活の中で自然と覚えるでしょ?」

 

これって、ホンマですか?

大人になったから言えることで、受験という期限つき条件つきの中学生や高校生のお子さんに通用しますか?

 

◆ 「読解問題を解く=読書(たくさん本を読む)」ではない?

 

● 乱読・積ん読・浮気読み・かじり読み

読書にもいろいろなスタイルがあります。例えば、1冊を読み切るまで他の本には手を出さないというものです。塾長の私ですが、これができません。それこそ学生の頃だけでなくて40歳近くになるまで「本なんて読まなくても生きていける」と思っていたくらいで、塾での指導という「仕事として」本を読むというよりも文章を読みはじめてから、ある日に手に取った古代史の書籍との巡り会いをきっかけにして「本っておもしろいのかも?」と気づき、いつの間にか古代史ファンになり、古代史をむさぼるように読み始めました。こんな感じなので、幼い頃からのいわゆる「読書の躾(しつけ)」がなっていないのです。ですから、1冊の本を最後まで読んでから別の本を読むスタイルの人を尊敬しています。だって、私は「通読」ができなくて、例えば、5冊くらいの本を同時に「乱読・積ん読・浮気読み・かじり読み」をしながら、その5冊の本を読み終えるというスタイルだからです。

 

● 乱読・積ん読・浮気読み・かじり読みでどうなった?

その結果ですが、メリットは情報量が異様なほどに増えたこと、デメリットは「積ん読」量が増えたこと。なぜなら「積ん読」というのは、「読もうと予定している本を積み重ねておくだけで、そのほとんどを読まないこと」ですから。つまり、予定は未定というパターンです。それでも情報量は圧倒的に増えるので、読解問題と詩の題材文をよんだとき、増えた情報量が予備知識となって役に立てることができるといえます。そういう意味で、本をたくさん読みということはとても大切だと言えるでしょう。

 

● 読書は情報量を増やすことと「楽しみ」

ほとんどの人の場合、読書はあくまでも「楽しみ」ではないでしょうか。中には私みたいに「あ、この表現イイな~。真似をさせてもらおう」とか、「あ、こんな言葉があったんだ。覚えて使えるようにしたいな。」というような感覚で読まれていたり、「あ、これ、話のネタになりそうだな。」という感覚で読まれている方もいらっしゃるでしょう。読書が好きな方の多くは、その作家さんの表現方法や文体、更に、お話の進め方や小説であれば物語の内容に魅了されファンになるというパターンだと思うのです。でも、これって「読解練習」ではありませんよね?

 

● 読解は「楽しみ」ではなく、文章(題材文)の「分析」です

読書に対して読解は文字通り「読んで解く」という頭脳作業です。確かに、読書中も全く「読解」をしていないわけではありません。「あれ? この文、どういう意味だろう?」とか、「何でこんなところにこんな表現があるんだろう?」という、いわゆる「ひっかかり」を感じそれを読者自身が解釈をするということはしていますから、そういう意味では「読解」をしながら読み進めています。とはいうものの、「それ」は何を指すのかとか、「この文の言い換えをどこでしているのか」というような読み方はなさっていないと思います。この、「それ」は何を指すのかとか、「この文の言い換えをどこでしているのか」というような事柄を、漠然とではなくて明確な答を導き出す頭脳作業が「読解」なのです。つまり題材文の「分析」なのです。

 

◆ 「分析」には論理が伴う。「分析」は理系作業?

「分析」には論理が伴います。つまり、あなたが「こうではないか?」と感じたことを順序立てて誰もが納得できるように(あるいは、反論できるように)説明や証明をすることなのです。たとえば、数学の証明問題です。図形の中に合同な三角形が2つあるのを見つけたあなたが、それを誰もが納得できるように筋道立てて説明するという頭脳作業を通して、論理力を身に着ける練習をしているのです。読解問題も同じなのです。題材文の内容についてどのように進めれているのかを分析する

こと。その分析をする手引きとして設問があるのです。その設問に対して正しい答を導き出すのが「読解問題を解く」ということなので、図形の証明とおなじく理系的な頭脳作業をしているといえます。

読解問題の点数はこの順で上がっていきます

国語の成績が上がってゆくきっかけは、大きく分けて⑤つあります。

 

① 「これ」「それ」などの指示語が何を指すかという問いを正解できるようになる。

② 内容把握のための選択問題(大抵の場合は三択か四択)をの正解を導き出せる。

③ 文章中からの書き抜き問題の正解を導き出せる。

④ 文章中のことばを使って、例えば、30字や40字で答えるとき、文章中の中から該当箇所を選び出し、それを使って文を組み上げられて、設問の正解を導き出せるようになる。

⑤ 文章中のことばを使うだけでなく、文章中に書かれていない部分(いわゆる行間)を読み取って所定の文字数で答を導き出せるようになる。

 

①②ができるようになれば40点ライン前後に到達します。更に③については、とにかく書けるようにはなってきたけれど、正解部分と少しピントがずれているために不正解になるという状態から、徐々に正解部分とのピントが合うようになると、60点ラインの前後に達することができるようになります。

 

ところが、③の「書き抜き問題」と④の「文章中のことばを使う問題」とのギャップが大きくて、ここで足踏みをする生徒さんが増えてきます。なぜなら、正解となる文を構成する言葉を文中から目ざとく見つけられるスキルと、選び出した語を正解文として構築することができるスキルが必要になるからです。

 

⑤は90点ラインです。文中の言葉だけではなくて、行間に隠された筆者の意図を正しく理解できることと、それを的確な解答文として所定文字で書かなければいけないからです。つまり、文中から正解文を構成するための文言を素早く見つけ出せるめざとさ、行間を読み取ることの出来る洞察力、それらを脳裏でまとめてから所定文字で答えることのでいる「ことば力(語彙力)」の3つが必要となる問題なので、①②③④はクリアしたレベルでないと解けません。

80点ラインを分ける問題

この『はしれメロス』の記述問題は、前述の④レベルに当たります。下のような順序で文中から解答の核になる「強い言葉」や「強い表現」の部分をチェックしていきます。その際、限られた文字数なので、重なる部分や説明的な部分などは省いていきます。これにはスキルが必要なので、良問にたくさん当たって経験を積まねばなりません。